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沖縄県で写実の展覧会(ホキ美術館展)に行ってきました

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今更ですが、沖縄で写実絵画オンリーの展覧会が開催していました。


大昔に千葉で観たので、観に行かなくてもよかったのですが一応自分も独自のリアリズムを軸にしていますので再確認のために7、8年振りくらいに観に行ってきました。

沖縄県立美術館(通称おきみゅー)です。

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6日に収蔵作家の一人の安彦文平氏が講演会を行う予定があったので、それに合わせて行きました。
作品点数は少々少ないですが大きな作品が多く64点ありました。






ホキ収蔵作家の描写力           

大きな作品は100号以上ですが、基本的に100号サイズの作品は自身が所属している公募展用か、団体に所属していない作家はそれ以外の公募に出展する目的で描かれたものと思います。


観てきた感想は千葉に展示してあった時と特に変わったことはありませんでした。
確かに上手なのですが、写実作品はそこで終わってしまいますね。

僕が初めて写実絵画専門のホキ美術館にタマ美の同級生を誘って行ったのが7,8年前でした。
まだコンクールも含めて外に作品を展示した経験が無かったときのことですが、初めて国内作家の写実作品を観たときの正直に思った感想は

「大体の作品も、そこまで(描写技術が)ではないんだなあ。。
 遠くで観ると縮小されて綺麗に観えるけど、近くで観ると結構荒い。。」

これが正直に思ったことでした。
生の絵画よりも画集などを集めてよく見ていたからか、それとも期待値が高過ぎたのか、とにかく大半の作品は実際に観て思ったほどでもありませんでした。
生の写実作品よりも印刷された画集のほうが縮図されて荒いタッチも見えないですから、「やっぱり画集でいい」という風に思ったほどです。

僕は人物画専門なので人物画に限って言いますと、髪の毛も一本づつ描いているほど細かい写実描写をされている作家は、ほんの数人だけでした。
こんなことを何者でもない僕が言うなんて偉そうにと思いますが、正直にそう思ったのです。
空気遠近法的に人物など輪郭や髪の毛をボカすと綺麗に観えるのですけど、誤魔化しのテクニックとしても使えるので、全部細かいところまでガチガチに描き込んである写実が好きです。

(ただの写実絵画には感動はありませんでしたが、昔、山口晃さんと会田誠さんの展覧会で観た会田誠さんのミキサーの作品には驚きました。会田誠さんの作風は上手なのですが完全に写実作家というわけではないのですが、誰よりも描写力が高くて、その上スケールも超絶大きくて、描写技術と根性と作風のセンス全てに感動しました。コンセプチュアルな現代美術の写実のほうが自分は好みです。)



ホキの中でも際立つ5人(人物画の作家のみ) 

しかし、そんな僕でも良いなと思える作家は居ます。

僕が思う世代の近い若手の写実作家で描写力とセンスが光る作家は、山本大貴氏ただ一人ですね。彼だけ飛び抜けています。
売り絵でも手抜きと言えない作品を描いていますし、果敢に難しいテーマに挑戦していることもとても好感が持てます。
前に白日会の合宿に参加したときに同じ部屋だったのですが、本人も物凄く謙虚な人でビックリしました。

僕は作品を観たら、その作家が苦労して描いているのか楽に描いているのか解ります。
苦労して描き上げた作品より楽に描いてる作家が好きです。

さらっと楽に描いていると思われる作家のベスト1は森本草介さんですね。
次が山本大貴氏で次が島村信之さん、でも個人的に最も好きな写実作家は大矢英雄さんでした。

でも単純に描写力だけで言ったら、ぶっちぎりで石黒賢一郎さんでしょうね。
石黒さんの描写力はワールドクラスなリアリズムと思います。

この5人だけは人物画の写実作家の中でも群を抜いています。




勝手にランキング          

ホキの写実作家(人物画のみ)を私が個人的にランキングすると。。

描写力
1位 石黒賢一郎 
2位 大矢英雄
3位 山本大貴
4位 島村信之
5位 森本草介

作品内容
1位 山本大貴
2位 石黒賢一郎
3位 島村信之
4位 大矢英雄
5位 森本草介

こういう結果になります。
描写力も作品内容も1位と2位ではかなり差があります。

描写力は超絶ぶっちぎりで石黒さんです。
頭おかしいほど上手いです。
描写にこだわっている分、作品枚数は少ないです。
(余談ですが、この方の所属ギャラリーが僕が唯一所属してみたかったギャラリー小暮なのですが、石黒さんが月間美術デビュー展の審査員のときだったら、頼めたのに。。と個人的に思うところはあります。。)

作品内容としては山本大貴くんですね。彼の世界観は面白いです。
まだ若いですし、彼のアイデアの元も知っています。いつまでも枯渇しないでしょう。
また、いろいろ作風が変わることが作家として最も尊敬できる部分です。
毎回同じような絵を描くのは簡単ですが挑戦することは困難です。
しかしそれ以上に楽しさもあります。
彼のように売れっ子で年間描く枚数が多いにもかかわらず、挑戦して作風が変わっていく作家はクラシックな作家の中では稀有な存在と思います。

森本草介さんはこの中でも最も写実で有名人ですね。
というか画家としても超がつくほど大御所ですし、現存する作家では最も高額なのではないでしょうか。1号(ハガキ大程度のサイズ)300万くらいしますよね。
画集も持っていますし、最初に写実を目指した時はかなり参考にしました。
予備校時代に薄塗りが写実のポイントと自分で気付いたキッカケは森本草介さんの画集がヒントになりました。

島村信之さんは、ウィリアム・ブーグローに影響を強く受けているので、人物がブーグロー並かそれ以上に美しいです。ボカシてありますが、とても綺麗な人物画で、美しさで言ったらナンバーワンですね。ボカシてありますが、描くところはとても細かく描かれていています。正直好きな画風です。

大矢英雄さんは個人的に最も好きな人物画です。とにかく技巧派で、この方の人物だけは描き方が超絶オリジナルです。テンペラ技法ですが独特の描き方です。ここまで凄い技術は観たことがありません。こういう派手さは無いけど大人そうな職人気質の作品に惹かれますね。




展示物の写真撮影禁止              

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ところで、いざ中に入ろうとしたら例によって撮影禁止のマークが入り口に貼られていました。
なので残念ながら展示風景はお見せできません。

ホントにどこの美術館でも通常は禁止していますよね。

これってなぜかと言うと、
日本の美術館は箱物行政の象徴で美術館自体がコレクションしている作品がほとんど無い。したがって企画展がメインとなり、館所有の作品で常設展を十分に行えない問題がまず有ります(それはまさにハコだけで、中身の無い巨大なレンタルスペースと化しています)。




禁止の理由             

で、企画だと写真OKで常設だとなぜNGなのか。
その大本の理由はズバリ「著作権」です。

館が持っていない作品は他人(作家や没作家の遺族、コレクター、他)がその作品の著作権を所有していますから、好き勝手に写真に収められないんです。

各美術館によってそれぞれルールが違いますが、
念の為「おきみゅー」の学芸員の方にも確認致しました(一部カメラのフラッシュが作品にダメージを与えるので禁止にしている美術館もあります)。

他には著作権料が発生する作家さんもいるということも撮影禁止の要因にもなっているようです。
(森本草介氏か野田弘志氏など画集が出版されていますしね。。)。


まあでも写真撮影についても、
スマホでの撮影なんか別にどうってことないんじゃないかと個人的には思いますね。

色んな事情があるのでしょうが、欧米と違いすぎます。
来場されたお客さんにSNSなどで広めてくれて話題になった方が作家としても館としても良いと思いますけどね。。




収蔵作家の方の講演会           

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僕がおきみゅーに行ったときは安彦文平先生が講演会を行う日だったので、ちょっと聞いてみたいことがあって講演会に出席してみました。
ホキは白日会(写実を標榜している公的な美術団体)の会員が多いのですが、安彦先生は珍しく無所属でした。

講演会は短くて一時間で終了しました。
内容は作品説明でした。

他の写実作家の方のお話もありました。
その中で気になったのが名前は忘れてしまいましたが、安彦氏よりも年配の先輩作家さんで名のある写実作家が居たらしいですが、その作家さんはきちんとした定職が無かったようです。画業が仕事としてありますが、正直写実作家はとてもじゃないですが食えないので、奥さんがお仕事されていたようです。
こういう話は案外耳にします。
一人画集も出している方で、ぼくも好きな写実作家がいるのですが、その方も以前ギャラリーでお見かけしましたが、制作日数がかかるので一年に一枚とか描けないという話を聞きました。正直一年に一枚ではデパートやギャラリーで作品が売れても食えないですよね。ましてや家庭がある方はなおさら。なので副業をしている方が多いです(デパートなら三等分、ギャラリーなら二等分の分前)。
すごく有名だけど実はヒモ生活という作家も昔から一部にはいます。



講演の最後に質問してみました       

講演が終わって最後に、個人的に聞きたかったすごくイヤラシイ質問をしてみました。

写実作家の収益について

「すみません、質問よろしいでしょうか。」

安彦先生「はい、どうぞ。」

「写実作家の方々って年間描く枚数が少ないですよね。年に一枚しか描けない作家もいますし。教室とか教授とか副業が無い作家は、それでどうやって生計を立てているのですか。」

安彦先生「それはですね~。。僕もよくわからないんですよ(苦笑)。でも作品の単価が高いですからね。」

「単価が高いと言っても年に売れても一枚じゃ生活できませんよね。例えば一枚300万でもデパートなら100万にしかまりませんし。ギャラリーでも150万ですよね。」

安彦先生「う~ん。。どうやっているんでしょうね(汗)」


日本のリアリズムのレベルについて

「すみません、もう一つ質問があります。ぶっちゃけ日本のリアズムって世界で通用すると思いますか。」

安彦先生「というのは?」

「日本の写実のレベルって欧米から観たら全然で、正直ここで(ホキで)収蔵されている描写力の作家って欧米じゃゴマンと居て、もっと凄い描写の作家もゴロゴロいますよね。その次元で日本の写実って海外で通用しますかね。まして今の時代に”写実”という技術だけのものが海外で通用するとは思えないのですが。先生はどう思われますか。」

安彦先生「確かにそうですね。うん。海外ではいますね。。」

「すみません、変な質問してしまって。ありがとう御座いました。」



最後に         

僕の質問がエグくて安彦先生は若干困っていらっしゃったかもしれません。
しかしせっかくの機会なので、当たり障りのない無味乾燥なことを聞くくらいなら、面白いことを聞いてみようと思ったんです。
ぼくの愚問にもお答え頂いて感謝致します。

それとホキ美術館は国内の写実作家の作品を収蔵していますが、これはクラシックなスタイルの作家に限定しています。
現代美術にはもっとリアルに描ける作家も中にはいますが、彼らは団体に所属はせずに個人で動いているので、ホキなどクラシックなところで評価された作家が好きな場所にはお呼ばれしません。
あくまでクラシック系の写実作家のみの美術館です。
※石黒さんや山本大貴氏など現代美術系のギャラリーにも扱われていたりもしますが、彼らはクラシック系の作家です。


いつも思っていますが、
SNSでもなんでもそうですが、”質”だけで評価されるほど世の中甘くありません。
今の時代、”質より量”です。
多くの人に知ってもらうことが、ファンの獲得になり、そのファンの一部が作品を購入する。
質が良くても誰も知らなきゃ作品も買われません。
だから低品質でも毎日SNSなどに発信してる人は認知度が高まり、ファンが増えて、結果作品が買われる。メディアなどで認知度が上がった人もファンが一定数つくのと同じです。

今は作家はギャラリーが育てる時代ではなく、自分自身でプロモーションしなくては売れない時代です。現代美術の作家なら尚更。。

とにかく重い腰を上げて量を発信するしかないんですね作家は。